ブログを体験してみる

はてなダイアリーの創設時期からブログを体験してみようと書きはじめてながい年月が経過した。

2023-01-01から1年間の記事一覧

貝原益軒を書こう 七十四  

貝原益軒を書こう 七十四 中村克博 根岸たちは平戸の船での会合を終え、厦門の行きつけの茶屋でくつろいでいた。店の奥で五つの卓に分かれてたむろしている。日差しが西に傾いて陽は店の奥までとどいていた。十人以上の若い日本の傭兵たちは大きな声で話すこ…

貝原益軒を書こう 七十三 

貝原益軒を書こう 七十三 中村克博 あの日から五日たった夕方、平戸からの船が厦門に入ったとの知らせがあって、あくる日の朝餉のあと松下と根岸は部屋を出た。佳代も一緒だった。鱗雲が遠くに、青い空は澄み渡って、そよ吹く風は冷たかった。いつもの衛兵が…

貝原益軒を書こう 七十二

貝原益軒を書こう 七十二 中村克博 厦門の秋は涼しかった。天気のいい日が続いているが朝など日陰にいると肌寒い。根岸と佳代それに柳生の松下が行きつけの茶屋にいた。店の床は石張りで水を流して洗ったあとがまだ乾かず湿っていた。 長身の娘がいつものよ…

貝原益軒を書こう 七十一 

貝原益軒を書こう 七十一 中村克博 すっかり日が落ちていた。涼しい風がふいて茶室から母屋に移った久兵衛と佐那は二人で夕餉を頂いたあとだった。部屋は燭台の光で明るかったが庭に面した障子の外が白くなったので月が出たのが分かる。 佐那が障子を少し開…

五島から博多まで

五島から博多まで 中村克博 九州商船のフェリーは長崎港を朝八時すぎに出て五島の福江港に三時間ほどで着いた。フェリーを下りると車で福江港近くの石田城の跡に出かけた。五島氏一万二千石の本丸跡地は五島高校になっていた。海風が強い石段を女生徒が数人…

貝原益軒を書こう 七十  

貝原益軒を書こう 七十 中村克博 先日、南禅寺の金地院をたずねてからひと月ほどたっていた。お盆もすぎて、いくつもの夏の行事も終わって、セミの声がすずしくかんじるようになっていた。 久兵衛は松永尺五と久しぶりに対面していた。受講場所が二条城の近…

金地院の八窓席、袖壁の下地窓・・・

貝原益軒を書こう 六十九 中村克博 南禅寺の金地院には拝観する建物はいくつもあるが本堂だけを見学して外に出た。石畳のゆるやかな坂道を下りていった。人の通りが多くなっていた。木立の葉陰をとおして日差しがまぶしかった。旅籠や湯豆腐を食べさせる店や…

貝原益軒を書こう 六十八

貝原益軒を書こう 六十八 中村克博 久兵衛は下宿屋を出て四条の橋を渡っていた。下宿屋の娘が一緒だった。朝の日差しに鴨川のせせらぎが光って、岸辺に白い鳥が長い首をおり曲げてまどろんでいた。風がひんやりすがすがしい。 娘が下駄の音をはずませ欄干に…

貝原益軒を書こう 六十七

貝原益軒を書こう 六十七 中村克博 根岸と佳代は厦門にいた。鄭成功が厦門を支配すると明の再興を願う意を込めて、この地を思明州と改称していた。根岸は朝の食事のあと、思明城の中にある宿舎を出て町の通りを散策するのが日課のようになっている。 台湾の…

貝原益軒を書こう 六十六

貝原益軒を書こう 六十六 中村克博 尺五は話をつづけた。 「根岸殿は佳代さんといっしょのようです。二人は大坂からオランダが領有する台湾のゼーランジャ城に着いたことはご存知ですね」 久兵衛は自分の席にもどって尺五の話を聞いていた。 「はい、そのよ…

シャクナゲが咲いている。

シャクナゲが咲きはじめている。 敷地のまわりの杉の木を千本ほど伐採して日当たりがよくなっている。 日の光をたくさん受けるようになって葉っぱが黄色くなっているのがある。 大きな樹木の近くにあるシャクナ元気がいい。この花は日影が必要なのだろう。 …

思うまいとも思わない・・・ 中村克博 黒田家傳の柳生新影流兵法柳心会に入門して十二年ほどになる。初めのうちはいかに速く刀を抜くか、そして技をできるだけ多く身につけることに興味があった。ところが、それが根本、考え違いだと最近になって思うようになっ…

貝原益軒を書こう 六十五

貝原益軒を書こう 六十五 中村克博 母屋で朝餉をいただいて離れの自室に戻って講習堂に出かける準備をしていた。 下宿の娘がお盆に湯呑を乗せてやってきた。 縁側に膝をついてお盆のまま畳に置いた。 「ご飯を食べて、お茶も飲まずに・・・ 今日はお急ぎですか…

貝原益軒を書こう 六四 

貝原益軒を書こう 六四 中村克博 久兵衛は午前中の勉学を終え、持参した弁当を同僚の受講生たちと一緒にいただいたあと一人で講習堂の裏山に行った。裏山の竹林では年老いた下人が頬被りをして孟宗竹の間伐をしていた。切り倒した孟宗竹の枝を打ち、集めて焚…

貝原益軒を 書こう 六十三 

貝原益軒を 書こう 六十三 中村克博 ゼーランジャ城に帰った根岸は佳代の部屋にいた。佳代が市場で買い物をした食料品の整理を手伝っていた。佳代が使っている部屋は二間あって一つは広く、竃があって煮炊きできるようになっていた。根岸は佳代に言われるま…