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はてなダイアリーの創設時期からブログを体験してみようと書きはじめてながい年月が経過した。

2024-01-01から1年間の記事一覧

貝原益軒を書こう 八十

貝原益軒を書こう 八十 中村克博 根岸は下宿先の久兵衛を訪ねていた。天気はいいが青い空がすこし霞んでいた。二人は縁側に座っている。近くの桜が屋根の向こうに見える。花びらがこちらまでちらちら散ってくる。ときに風が強く吹くと花びらは部屋の中まで舞…

貝原益軒を書こう 七十九

貝原益軒を書こう 七十九 中村克博 根岸と佳代それに松下は平戸の船の船長や船乗りたちに別れを告げて大坂奉行の小早船に乗りかえ大坂城に近い船着き場に送られた。三人はほとんど口をきくことはなかった。さきほどの平戸の船でおきた騒動をまだ引きずってい…

貝原益軒を書こう 七十八 

貝原益軒を書こう 七十八 中村克博 検閲船は平戸の船との距離が一町ほどになると取舵で折り返した。折り返すと平戸の船の右舷に並んだがすぐに船足を速めて前に出た。 船長が松下に、 「弁天船の大きな一枚帆は扱いがむつかしいが幕府の船乗りは巧みな帆さば…

貝原益軒を書こう 七七

貝原益軒を書こう 七十七 中村克博 久兵衛は太秦の広隆寺の山門から境内につづく石畳におりた。空は暗くはないが薄い雲がおおって寒かった。小さな雨粒が漂うように降って羽織を濡らした。佐那は頭巾をかぶってきれ地の傘をさしていた。 佐那がうしろから久…

貝原益軒を書こう 七六

貝原益軒を書こう 七十六 中村克博 平戸の船は日が落ちる前に厦門の港を出た。外海に出ても天気はよく月の夜空が明るかった。西の風が白波をちらほら見せていたが波はおだやかだった。三人は甲板にある船室で夜具にくるまっていた。三人とも話はしないがいつ…

貝原益軒を書こう 七十五

貝原益軒を書こう 七十五 中村克博 それから数日がすぎて、厦門島の西の沖合で武器の積荷を鄭成功の船に瀬取りで移し終えた平戸の交易船は厦門の港に回航されていた。根岸と佳代それに松下は昨日からこの船に移動していた。海鳥の群れが岸壁で羽を休め高い空…