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はてなダイアリーの創設時期からブログを体験してみようと書きはじめてながい年月が経過した。

香椎宮で居合の奉納があった。

昨日の日曜日、秋の大祭に黒田藩伝、柳生新影流の奉納があった。

黒田藩伝、柳生新影流正統、十四代宗家とマイク師範が宮司さんにご挨拶。    舞の奉納で神事がはじまる。

高段者の立派な拵えの差料が目についた。    本殿での神事が終わって居合の奉納がはじまる。

今回は女子の参加は一名だった。    高揚して体が硬く、二つの技がコンガラガッテ一つになって床を切った。
演武前の作法では、みんなの最前列だった。目の前にお手本がなく唖然とした。日ごろ漫然としているとこうなる。

高段者演武、奥の技、手の向きが逆手になっている。  若いのに気負なく握る手が軽い。上手なのは天分だろう。

マイク師範の斬試の巻き藁は斬ったあとでも、しばらく落ちなかった。  宗家とマイク師範の演武は荘厳さがうかがえる。

高段者の真に迫る演武がつづいた。  マイク師範の鉄扇を受けた清水師範の後頭部から赤いものが噴き出ているようだ。

後ろから頭を打つ技があるようだ。    杖の演武はいいなぁ、僕もやってみたい。

無事に滞りなくおわった。 やはり神社の奉納は気分がいい。

妻が流鏑馬を見て帰ろうと言う。 いただいた弁当を木陰で食べた。 流鏑馬が午後一時から始まった。

流鏑馬は初めて見た。  おもしろかった。




先週のエッセイ教室に提出した原稿は、


アテナの銀貨                    中村克博


 南宋の戦艦にからめられたアラビアの輸送船、そのあいだに突っ込んでいたアラビアの戦艦が一塊になって南の風に翻弄されていた。休戦が成立して戦いはない。アラビア船の三角帆は風をとらえていたが南宋の船は横帆が向かい風を受けてしばたいていた。マンスールの船は南の風に押されてアラビアの輸送船へ容易に接舷した。すぐに二人の船乗りが縄梯子を登り、船長に事態の説明をした。船長は了解して南宋の捕虜たちを乗船させた。間をおかずにマンスールの船が離れた。
輸送船での役目を終えた二人の船乗りは、次に隣のアラビアの戦艦に移動して、こんどは戦艦の船長にマンスールの言い付けを伝えた。
 戦艦の船長は了解した。ただちにアラビアの輸送船の乗組員がアラビアの戦艦にぞくぞくと移動し始めた。すると、それが完了するのを待っていたように南宋の戦艦に動きが見られた。百人ほどの南宋兵や水夫がアラビアの輸送船にアラビアの戦艦をつたって移動しはじめた。決死で突入したアラビア戦艦は湧き上がるように殺気立っている。その海兵の前を武装した南宋の兵が整然とアラビアの輸送船の押収に向かっている。マンスールの船はその様子を近くから左舷まわりで巧みに操船しながらながめていた。
 マンスールが兵衛に、
「ウマク、イキソウデス」
「緊張しますな、いま一人でも斬りかかれば混戦になります」
「ハ、ハハ、ムスリムノ、ヘイハ、ダイジョウブ」
「よく、統制がとれておりますな、まるで傀儡人形(くぐつにんぎょう)のようじゃ」
「ヘイニハ、タマシイアリマス、ムスリムハ、アッラーノ、ココロアリマス」
「やや、これは失礼つかまつった。ただ私情をおさえ勇猛だと…」
 
 からまっていた三隻の船が離れていく、まず南宋に捕獲されたイスラムの輸送船が離れて先に進んだ。黄色いアラビアの旗印が降ろされ、代わって赤い吹き流しが風になびき船は進路を東にとって北にまわる。続いてイスラムの戦艦が離れて南東にゆっくり進んだ。
 風を抜いて漂う南宋の戦艦で、役目を終えた二人の聖福寺の僧が南宋の小舟に移乗しようとしている。太い綱で編まれた目の粗い網をつたって降りようとするが、うねりに波が荒くて容易ではない。小舟の舷側が戦艦の大きな船腹に打ちつけられて大きな音がしてすぐに離れる。右へ左へと揺れる小舟の帆柱が戦艦の索具にからみそうになる。
「あれでは無理ですな、小舟がこわれる」
 兵衛は網につかまって波をかぶっている二人の僧を見ている。
マンスールは先ほどから遠くの海を見ていた。
「マダ、テキハ、サンセキ」
 兵衛も目を遠くの海にうつして、
「時が経つほど我らは不利ですな」
 この場での一連のこころみはマンスールの思惑のとおりに進んでいたが、南宋の戦艦はまだ三隻が残っている。南の風を上り角度いっぱいに東よりに進んでいた二隻の南宋の戦艦が折り返して近づいていた。もう一隻はマンスールの船と接舷して戦った南宋の戦艦で西南西に進んでいたが、今は南の風を右舷から受けて全速で接近していた。こちらの状況はわからないだろう。接触すれば戦を挑んでくるのは間違いない。二人の僧が小舟に移るのを断念したようで甲板にもどって大声でこちらに何やら話しかけていた。二人で声を合わせて叫んでいた。
「我らは、残る、先に行ってくれ」
 二人の僧は雨風で消されそうになるが声を合わせて何度も叫んだ。兵衛が身を乗り出して聞き取り、うなずいた、何度も頭を大きく上下した。振り返ってマンスールを見た。
マンスールが口を開いた。
「ヒョウエ、フタリニ、ツタエテクダサイ、ウゲンニウツルヨウニ」
 兵衛はマンスールの言葉が意外だった。すぐには返事ができないでいた。
「船を風上にまわして、南宋の船尾に着けるのですな」
目を細めた顔に雨が降りかかっている。雨のしずくを右手の甲でぬぐった。
兵衛は聖福寺の僧に向かって大声で叫んだ。何度も叫ぶが風上に向かって叫んでも声は届かなかった。兵衛は身振り手振りに方法を変え懸命だった。そのあいだにマンスールは船長に指示を出していた。上甲板に大勢いるアラビアの兵士はみんな同じ表情で手に汗をにぎって兵衛の様子を見ては、もどかしそうに大船の上にいる二人の僧を見ていた。
マンスールの船が南宋の戦艦の後ろにまわりこんだ。南宋の左舷後尾から舳先を近づけたが風が強い。風を抜こうとすれば三角帆の帆げたが戦艦に接触しそうになった。舳先が戦艦の船尾に強く打ちつけられて船が振動する。船長が上甲板に向かって叫び、水夫は総がかりで複雑な帆さばきに物狂っていた。マンスールの船は波間に漂う戦艦に接触したまま風に押されて進んで行く、兵衛は船尾楼を駆け下りて船首の方に移動していた。聖福寺の僧が左舷の船端にまだ見えない。船首の甲板は船腹よりも反り上がっているので、大きな南宋の戦艦の上甲板の様子がよく見えていた。
マンスールの船の舳先が戦艦の船腹を過ぎてから二人の僧の姿が見えた。南宋兵の鄢い軍装の群れの中に白いアラビアの衣装をなびかせた聖福寺の二人が兵衛の方に駆けてくるのが見えた。二人が船端にたどり着いたときには舳先が前方にかなり進んでいた。飛び降りるには高低差が十尺ほどあったが手すりに足をかけ、そのまま二人は同時に転げ込んできた。アラビアの兵士たちが抱きかかえ歓声のようなどよめきがあがった。すぐにアラビア船は南宋の戦艦から離れていった。

マンスールと兵衛は上甲板を下りて次郎のいる部屋にいた。聖福寺の二人の僧も一緒だった。部屋には次郎が背もたれに体をゆだねて座っていた。マンスールは胡坐を崩して片膝をたてて茶を口に運んだ。アラビアの女が盆に湯呑をのせて、もう一人が、次郎の正面に座っている二人の僧に熱い湯呑を手渡した。
兵衛が茶を一口飲んで、
「それにしても、禅僧がイスラムの白い衣装をまとって駆けるのはいいですな」
 次郎が笑いながら、
イスラムの格好で宋の言葉を話して、日本の言葉を叫ぶと宋人は驚いたでしょう」
イスラムに化けたのは見破られましたかな」
「いずれにしろ祝着至極でございましたな」と兵衛がいった。
「しかし、アラビア船一隻と積み荷を失いました」と聖福寺の僧が言った。
「イクサ、ナイ、ミンナ、ブジニ、カエッテキマシタ、ダイジョウブ」
 次郎が真顔にもどって、
「金は国が乱れ隣国の侵攻を受けてモンゴルは国境を脅かしておるそうな、モンゴルが金に攻め入れば南宋は危うい。このたび金国に硫黄や刀剣類を運び届けるは南宋のため、であれば船一隻と金からの積み荷をくれてやってもと、マンスールは言うのですね」
「そうですか、それは、ありがたいことです」と僧の一人が言った。
「いやはや、大陸の国々の様相は複雑怪奇ですな」
「それは、我が国の鎌倉と朝廷、それにまつわる豪族や武士団の様相も同じでしょう」
「そうでしょうか、ちと、違うような気がしますが」
 そのとき、ラッパが鳴った。
「僚船の戦艦と輸送船に出会ったようですな」
 兵衛が立ち上がろうとしたが、マンスールが、
「アトハ、ハカタニ、ムカウダケ、センチョウニ、マカセマショウ」
「そうですか、では、茶をもう一杯」と言って座りなおした。
 アラビアの女がみんなに茶を注いでまわり、丸ごとの桃が皿に盛られてきた。
 聖福寺の僧が次郎の足を見て、
「傷のぐあいは、いかがですか」
「痛みはもうありません。そろそろ歩きたいのですが」
「その傷では、まだでしょう」
「それで今のところ、二人の女が足の指を一本一本、丹念に揉みほぐしてくれます。そのあと、伸ばしたり、ねじったり、交互に折り曲げたり…」
「それはいい、血行がよくなり、傷の回復を早めます」
「それが、とにかく強い力で指の股が裂けるほど、骨が折れはしないかと、傷よりも、それが痛くて、はじめの頃は涙が出るほどでした」
「はは、は、そうですか、アラビアも同じような療法なのですね」
「指先の刺激は頭への伝達がよみがえります。深く長い呼吸が大切です」
「指先の血の巡りは心の臓から送られます。足全体の血行が盛んになります」
 次郎は禅僧の説明に納得したようで、
「そうですか、さらに、仰向けに寝て尻の下に手を重ねて腰を浮かせ、右回りに左回りに何度も何度も、休みながら何度も何度も腰をまわす運動をさせられますが…」
「腰の血行がよくなると全身に元気がみなぎります。文字通り腰は体の要ですからね」
「いずれも、吐く息は深く長く、ゆっくり、座禅とおなじです」
「そうですね、修験道の修業も呼吸に重きを置くようですね」
 みんなの話を眠るように聞いていたマンスールが、
イスラムモ、イノルトキ、シズカニ、ナガイ、イキ、ハキマス」
「はぁ、しかし、静かな長い息をしていると眠たくなりますな。はは、は」

 マンスールは船尾楼の甲板にいた。雨は降っていなかったが西の空にかたむいた夕日は雲の中に薄赤く見えていた。夕餉のあとだった。船尾楼の甲板には見張りの水夫と兵士が数人いるだけで上甲板を見下ろしても甲板員の姿は見えなかった。みんな今日一日の出来事を思いだすこともなく甲板下の船室で泥のように眠っているのだろう。強い南風は西風に変わっていた。南からのうねりはまだ残っていたが波は静かだった。
前を走る二隻の僚船を見ていた。その先には高麗の国があるが夕霧で暗いばかりだった。海賊の頭目と今朝の絶体絶命の苦戦が頭をよぎった。
「キシツフクシン」と頭の中でつぶやいた。
空を見上げた。西の空を振り返える遠く彼方の水平線が輝いていた。                            平成二十七年十月十四日