落札する積りは毛頭ないのだが、やっているうちに値ごろ感が出来てきた。
やり始めの頃は用心深く低い価格でやめて、その後の推移を楽しんでいた。
いつの頃からか、落札価格がだいたい予測できるようになっていた。
毎日のように数十本も吟味して時には幾振りかに応札していると、
段々に冒険心がわいて来て、落札値の近くまで行ってみたくなる。
自分の差し値を超えて誰も価格を入れないと心配になる。より高い値が入るとホッとする。
ところが、数日前、誰も応札してこなくて、この刀が僕の差し値に落ちてしまった。
幕末の天保、水心子正秀の門下で細川正義の2尺5寸2分の陣太刀拵え
刀長76.4cm 反り2.6cm 元幅33.5mm 元重8mm 先幅24mm 先重6.5mm
居合の練習には大きすぎるし、佩環が二つある陣太刀だから差せないし、
刀緒の紐を解いて半太刀の様にしてみた。
柄巻の組紐を水に湿した布巾でしごいて汚れを落としたら色が薄くなった。
ま、これなら腰には差せそうだが、鞘の抜き差しがうまく出来そうにない。
昨日、馴染みの刀屋に見てもらうと銘が良くないという。
どんな意味かととうと、偽物だと言う。本物ならそんな値段ではありえない・・と、
目抜きや柄頭の細工はいいらしい。
落札後に、オークションに出品していた刀屋からはメールで、
「個人的見解ですが、長年一作で伝わってき物を作り変えたり、
太刀と拵えを分離するのは、もったいないという思いも御座います」
ナカゴの形もいい。数日、触っていると段々に気にいってきた。
オークションに出品していた刀屋からは、さらに、
当時の大名は普段は打ち刀拵えで保存し、儀式や変事の際は太刀にして佩用した・・
この太刀は、多分戊辰戦争時の際、名のある藩主が佩用したと思います。
名前は出さない約束で当方の手に入ったものです。この程度のご説明でご了承下さい。
細川正義の刀は過去3振り扱いましたが、刻印1振り、無刻印2振りでした。
無刻印の1振りは昭和40年代の特別貴重刀剣でした。
どうぞ今後とも、宜しくお願い申し上げます。
と、あった。
刃まちには初刃がはっきり残っていた。
本物か、気にはなるが、ま、縁があったのだろう。大切に愛用しようと思う。