七類港の夜明けは美しかった。 景色が遠くまで見えた。洗濯した衣類が良く乾くようだ。
小さな漁船のおじいさんから船長がトビウオを買った。一匹20円だった。
干物にするさばき方を教わった。5匹目はうまく出来た。
24日の夕日が沈む、終日天気がよかった。風は後方45度のブロードリーチ18ノット。
25日の朝が来た。ワッチは一人で2時間、次の番まで4時間を2回眠った。気分がいい。
小戸を出た一日目の夜は少し時化たのでワッチは二人で、4時間おきに一人2時間ずつ眠った。
いずれでも、ワッチの後は熟睡する。揺れと疲れで頭の中は混濁して、朦朧としてバースに潜りこむ。
入港前には海図で確認しあっているようだ。
ベテランほど用心深い、何度もひどい目にあっているのだろう。
電話の人が教えてくれた。舫結びのエンドは上向きに立てておくように・・
そうすれば、形が美しいし解きやすいそうだ。
古いロープだとすぐにこうなる、と言うと、エンドをもう少し短くするように言われた。
それに、クリートの穴には舫いを通さないように、と、すぐには取れないからだそうだ。
25日午前18分、伊根港に入っていった。船小屋が軒を重ねてつながっていた。
むかし、陸から来たことがある。もう一度、海から来るとは思わなかった。
漁船の係留ブイのロープをペラが巻き込んだ。みんなが景色に見とれていたからだ。
船長がナイフを持って潜った。ロープは切らずに簡単に取れたようだ。
もし切って短くなったら帰って来た漁船は困っただろう・・
「へしこ」を作っている漁連の作業場を写真に撮ったら事務所の奥の人にダメだとおこられた。
お昼にトビウオの半干しを焼いた。 焼けるのが待ち遠しかった。
美味しかった。醤油をつけるともっと美味しかった。
グレープフルーツの食べ方もいろいろあるようだ。
「へしこ」の監督さんが温泉の車を手配してくれた。ありがたかった。
しかし待てども待てども・・ 30分ほども走って峠を越えて迎えに来たようだ。
「漁協のあの人の頼みでなかったら絶対に来ない」と怒ったように運転の人は振り向いた。
いい湯だった。帰りも同じ運転のおじさんが送ってくれた。途中で床屋はないかと船長が尋ねた。
機嫌は良くないが、寄り道して一軒しかない床屋に回ってくれた。船長と僕はそこで降りた。
運転のおじさんに「むかし、僕の友人で辻善之助と言う人の別荘があったのだが」・・
と、問うと、何と、よく知っているといった。ただ、会ったことはないらしい。
別荘初期の人だと、もう随分前にいなくなったと、会ったことないのに、やはりZenさん有名人なんだ・・
店には誰もいなかった。運転のおじさんが探してきた。隣家でおしゃべりをしていたようだ。
ハサミを持つ人は気のいいおばさんだった。「あの運転のおじさんはお得意さんか」と聞いた。
「あの人は毛があらぁせんがぁ」といって、一人で笑いだした。
「おくりびと」のポスターが家並みに似合っていた。無料で観れるようだ。