いい天気だった。おおむね北東の風、5m〜8mで冷たかった。
スタート「一分前・・」バウから聞こえた。 GO..GO..GO..!!
いいスタートだった。しばらくは前方に海しかなかった。 「MayBe」が風下から・・クルーの余裕の笑顔が並んでいた。
「MayBe」が上って見る見る離れていった。 いい風だった。
能古島を時計回りに検疫ブイを折り返した頃、「ジェッタ」が風上に来ていた。得意のジェネカーを準備した。
ハリヤードがメインセールのトップバテンに絡まった。何度か試みたが、うまくいかないので回収した。
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トラぶっている間に「ジェッタ」と「ルスドゥーラ」は遥か遠く玄界島の近くを走っていた。
寒い!!合羽の下のダウンベストが薄かった。ハイクアウトの間、難行苦行だと思って我慢した。
「ひらひら」は2隻とは違うコースを取って机島へ直進したようだ。
視界が良くて、北はオロの島が、東は相の島、その先の大島がはっきり見えていた。
机島を回る頃、「ジェッタ」と「ルスドゥーラ」に合流した。「ひらひら」は2隻に追いついていた。
気がつくと、そうなっていた。なぜか解らなかった??
「訳解らんうちに追いついたね」と言ったらスキッパーはいつもの笑顔で遠くを見ていた。
スキッパーはちゃんと計算してコース取りをしていたのかもしれない。たぶんそうだろう!!
一息つくまもなく、「ジェッタ」が後ろに迫っていた。お昼はとっくに過ぎて腹がへっていた。
机のブイを回る時には「ジェッタ」と「ルスドゥーラ」に再び追い越されていた。
クルーの一人に「お昼は?・・」と聞いたら、「飲み物しかありません」と・・
「腹がへったねぇ」と言うと「いいえ、」と短い笑顔で応えた。
風が東に振れたようで「ひらひら」のスピードが上がった。2隻を追い越した。が・・直ぐにまた追い越された。
スキッパーは「ジェッタ」の風上側の引き波の上を走らせる。時々手を伸ばせば届きそうになる。巧みな操船だ。
その間、クルーは無言で静かにジェネカーの準備をしていた。
ジェネカーが上がったらジブはほとんど同時に下ろされていた。持ち場が変わる。クルーは走る。
いい風が吹いていた。トリマーの力だけでは引けない。クランク!!クランク!!と叫んでいた。
クランク!!と言われてウインチを回している様子を撮る為に風下のステーに体を預けていたら・・
ブームが海面に当たってしぶきが飛んでいた。ボースンが手招きして呼んだ。いい写真が撮れていた。
「ルスドゥーラ」がスピンを上げようとしていた。国際レース級のクルーが乗っている。
よどみなくスルスルと上がる・・船足は落ちない。巧みな技は美しい。 セールも新しいようだ。
どうした事か・・ 不気味な音がして「ルスドゥーラ」のマストが途中から折れた。
人の不幸を喜びはしないが、やはり面白かった!!
笑うと力が抜ける。緊張がほどける。その間に「ジェッタ」が追い越していった。
ゴールが見えてきた。風が変わる・・セールを変える。 「ジェッタ」には数挺身の差で負けた。
ハーバーに帰って若いクルーがマストに登った。ライフジャケットを逆さにしてズボンの上にはいた。
ボースンチェアーの代用らしい。ハーネス用のアイにメインハリヤードを通していた。
シャックルでアイに繋がないように注意された。ハリヤードを「もやい結び」でアイに結んだ。
空が青かった。
この後みんなで食事に行った。
山賊鍋だった。美味しかった。海賊鍋はないのだろうか・・