九月に蒔いたクローバーの種が芽を出している。
種の蒔き方がうまくない。 芽の出ていない所は追加しよう。
クローバーの幼い葉が押し合い圧し合いしている場所もある。
きのうの金曜日、エッセイ教室に原稿を出した。
エッセイ教室なのに、小説の原稿を提出してみんなの批評を受けている。
きわどい濡れ場の場面だったが、以外に好評だった。
貝原益軒を書こう 四十七 中村克博
枚方の宗州屋敷に着くと舟方の一人が宗州の屋敷に走って状況を伝えた。佳代はまだ少し熱があるようだが歩けないことはなかった。それでも船頭は船に積まれている簡易な組み立て式の竹駕籠を用意した。佳代はそれに乗って舟方が二人して担いだ。
屋敷に着くと女将のよねが出迎えた。すぐに佳代を熱めに沸かされた五右衛門風呂に入れて体を温めた。風呂から上がると、いつも佳代が使っている部屋に通して、よねが卵酒を作った。酒の量は多めで渡来品の白砂糖を入れて飲みやすくした。佳代はよねに、いきさつを詳しく話す間もなくすでに、ぐっすり眠っているようだ。
根岸は行燈の灯った部屋で、よねに今朝からこれまでの出来事を話していた。少し温めた酒が湯呑にはいっていた。
よねは酒の燗が付きすぎないように火鉢の土瓶を釜敷の上に移して、
「そうですか、それは、朝からなんともはや大変な一日でしたね」
根岸は湯呑の酒を一口飲んで、
「およねさん、身共には大坂で新たなお役目が待っている。佳代殿をこちらで預かっていただければ安心です」
「そうです。そうしましょう。枚方に立ち寄られたのは幸いです。佳代さんは京で嫁入りの話がすすんでいる大切な時期です」
根岸は湯呑をかたむけて、喉を鳴らした。
「どうしたことか、大徳寺近くで災難に遭われた公家の女人と出会ってから、佳代殿はとんでもない事件に巻き込まれておるようです」
よねが根岸の湯呑に酒を注ぎ足して、
「夜が明けて、佳代さんが目覚める前に、気づかれないように、根岸さまは大坂へ出立なさってください」
根岸は湯呑を持ったまま、下を向いて考えるようにしていたが、
「それがいいようですね」
よねは、うなずいて、
「夜も更けます。風呂の用意ができています。ゆっくりあったまってください」
よねは、せきたてるように根岸の肩にふれ、立ちあがった。廊下の突き当たりを曲がって湯船のある部屋に案内した。廊下には所どころの柱に灯りがついて暗くはなかった。根岸が初めて見る行灯の形をしていた。蝋燭をガラスの火屋で包んでいた。おそらく南蛮渡りの品だと思った。
脱衣部屋にはいってすぐ、寝間着などの用意がされていないのに気づいて、
「あら、手拭いも下帯も用意がありませんね、お先に温まっていてください」
よねはそう言って出て行った。
根岸は檜の香りがする大きめの湯船に身を浸していた。湯は熱かったがしばらくすると体が慣れていい気分だった。およねさんは一緒に風呂に入ってくるのだろうか、などと想像していた。お先に温まっていて、と言った言葉が気になっていた。
部屋の戸が開く音がして、よねが顔を出した。湯加減をたずねた。湯屋の明かりが暗くて表情は分かりずらいが声がうれしそうだった。着物を脱ぐ衣擦れの音がしていた。裸になったよねがはいってきて手桶に湯を汲んで体を流した。
「根岸さま、少し前に行って下さい。間にはいらせてください」
根岸は体を前にやった。よねが片足を湯に入れた。根岸が横に体をねじってよねの手をとってささえた。よねが体を沈めると湯があふれてにぎやかな音をたてた。
「すこし熱いですね」
「体が冷えておるから・・・ すぐにほどよくなります」
よねが湯の中で両手をまわして根岸を引きよせた。根岸はなされるまま、よねにもたれかかった。やわらかい乳房が背中に押しつけられた。根岸の首筋に顔をよせ頬ずりする。吐息といっしょに唇をよせる。少しくすぐったいが、なんともいい気分だった。よねの両足が根岸の太腿の上から前に伸びてきた。奥の茂みが根岸の腰に密着していた。根岸は伸びている両方の太ももをさわった。柔らかかった。なめらかだった。しばらくふくよかな感触を味わっていたが、根岸は手をよねの太ももにそって少しづつ後ろにのばした。根岸の胸が高鳴っていた。よねは根岸の首筋に頬をつけたまま息を殺してじっとしていた。指がはうように少しずつ近づいた。指はためらうように動きをとめると、さらに奥に進んだ。そこは大きく開いて、ひだがぬめっていた。指がゆっくり動いて奥をまさぐった。いとおしむように、つくすように、いたぶるように・・・ 根岸の耳もとでよねがたまらず声をだした。
よねがささやくように言った。
「前に移らせてくだしゃんせ」
京ことばで恥じらうように言ったあと、からめていた足をほどいて立ちあがり、湯船を出ずに根岸の肩をまたぐように前に出て向かい合って湯の中に体を沈めた。根岸は手を貸しながらその様子を眺めていた。なんともきれいな体をしていると思った。よねは膝を曲げ、両手で根岸の顔を引きよせて頬ずりし唇を這わせる、唇を重ねて舌を吸って顔を左右に動かした。唇の上も下も舌先でなめまわして噛んだ。根岸はされるがままに目をつむって魂がとけあうのを感じていた。
よねは右手で根岸をにぎった。上下にゆっくりしごいて、三つ指でつかんでこねるようにもんだ。それを自分の中に入れようと腰を上げた。根岸が眼を開いた。乳房が目の前に浮かんできた。根岸はよねの体を持ち上げて深い谷間に顔をうずめる。
濡れた乳首の先に水玉ができて蠟燭の光を映していた。水玉の光を舌先でなめた。唇ではさんでなめた。深く吸って舌と上顎にはさんでころがした。
よねがあえぐように言った。
「つよすぎます。もっとやさしく・・・」
令和三年十二月二日