妻の従兄弟会のゴルフコンペ、毎年恒例の行事らしい。
いい天気で、暑くもなく寒くもない清々しい一日だった。
スコアは19ホールで200以上たたいたが実際は数が分からないほどだ。
いっしょに回ったシングルが、そんなに叩いてないよ、163だよと言ってくれた。
上手な人はヘタな相手の数まで分かるので不思議だ。
久しぶりのゴルフは楽しかった。一年に一回のこのゴルフ大会には参加しよう。
パターの練習だけなら、家のカーペットの上でできる。
ピンのパターのビンテージをネットで買った。ペーパーで丹念に磨いた。
送られて来たときは黑かった、汚れを落とすと綺麗になったが・・・
年式相応の風合いは消えてしまった。
元祖 ピンパター Oブレード、ピンパターの初期モデル と書いてあった。
昨日はエッセイ教室だった。所用があって行けなかった。
原稿を書き上げて行く準備をしていたが、残念だった。
貝原益軒を書こう 中村克博
久兵衛は茶を飲みほして、作法とおりに茶碗の拝見をはじめた。
忠真公が久兵衛の仕草をほほえんで、
「その茶碗は窯から出たばかりでな、今回初めて使うのだが野趣あふれる作風が気に入っておる」
久兵衛は両手に持っていた茶碗を畳の上に置き両手をついて、
「徳川家茶道指南役の小掘遠州公が全国七カ所の窯元をお選びになり、遠州七窯と言われ、上野焼もそのひとつと聞いております」
茶道頭が自服の茶碗を手にして、
「細川様のころには灰釉を使っておりましたが、近ごろは銅を含んだ緑青釉や紫蘇手などがみられます」
忠真公が、思案するように、
「わしは、まだ見たことがないが、武断から文治の治世に代わるとき、世の移ろいが茶碗のおもむきまで変えるようだな」
茶道頭が軽く頭を下げ、
「はい、茶碗に緑青などの色がはいると、はなやぎます」
忠真公が久兵衛に問うて、
「順庵に届ける茶碗は灰釉か、緑青釉か、どちらが良いだろうな」
久兵衛は軽くお辞儀をして、
「はい、緑青釉がよろしいかと思います」
茶道頭が一口飲んで、
「緑青釉に窯変の赤が出たものがあり、なんとも美しゅうございます」
しばらく間が空いて、忠信公が思いついたように、
「先ほど、広間での進講のおりに近習が尋ねておった、イスパニア(スペイン)とポルトガルはキリスト教布教と異国の征服を抱き合わせにする訳はなんでしょうか、という問いに、そちは、どのように考えておるのかな」
久兵衛は少し考えるようで、
「私ごときの意見、出すぎたことと承知しておりますが、申し上げます」
「黒田家に、我が小笠原家は娘を嫁がせておる間柄である。気楽に述べよ」
「はい、キリスト教の国が異国を攻め取るときに、改宗を先行させるのはスペイン、ポルトガルよりも千年も前、東ローマ帝国が北の国を攻めるときから行っています」
「ほう、そのような昔からとな」
「はい、領土を侵す前に領民の土着信仰を一神教に変え、心を侵略しておきます」
「そうか、そのようにしてキリスト教の領土を広めキリスト教の国ばかりになったが、今はキリスト教同士が戦をしておるのだな」
「はい、それにイスラムの国とも千年前から戦は絶えることがありません」
「はい、長崎でオランダ人から聞いた話では、今日でもキリスト教の国はイスラムに刃向かえません。キリスト教の本山コンスタンティノープルはスラムに奪われ以来、二百年になるそうです」
「そうか、キリスト教は本山をイスラムに攻め滅ぼされておるのか」
「二百年ほど前、オスマンのメフメト帝が十万の軍勢でコンスタンティノポリスを包囲し、オスマン帝国の新兵器ウルバン砲を使って圧倒し、オスマン軍の総攻撃によってコンスタンティノポリスは陥落、皇帝コンスタンティノス十一世は部下とオスマン軍に突撃して行方不明となり、古代以来続いてきたローマ帝国の系統は途絶えることになります」
「なんと、さようにイスラムは強大なのか」
「はい、ポルトガルもイスパニア(スペイン)も千年ほど前には、イスラムが国土のほぼ全域を支配下しておったようです」
「そうか・・・」
「はい、長崎でオランダの書物を読んでおりますと、イスパニアが失地を回復したのは、ほんの百年ほど前、数百年も続いていたイスラムとの戦いで最後の拠点グラナダを陥落させたときです。さらに、この年、イサベル女王が資金を出したクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸に到達しております」
「そちはオランダの文字を読めるのか」
「いえ、十分ではありません。オランダの通事に助けられました」
「このころからだな、イスパニアやポルトガルが海を渡って他国を侵略しだすのは」
「はい、インドを目指しておったのですが、間違ってアメリカ大陸に到達したようです。そこでは原住民から根こそぎ金を略奪し、逆らえば男は皆殺し、女は犯し続け、多くを奴隷とし、今も奥地に奥地にと侵略をつづけています」
「相手が弱ければ、容赦はないようだな」
「キリスト教の国とイスラムの国以外は侵略しつくしたようです。それに今ではオランダとイギリスが領土や奴隷の奪い合いにくわわり互いにも争い合うありさまです」
「我が国は徳川幕府でまとまったばかりで、国のありようも急ぎの課題だが、キリスト教との戦にも備えねばな、そちはどう思うかな」
「スペインもオランダも我が国への武力侵攻は叶わないとは思いますが」
「確かに今はそうだが、これから我が国は文治の治世となる。武力は時々使っておらねば維持は難しかろう。体と同じで使わねば鈍ってしまうのではないのか」
「はい、歴史は人それぞれの主観で語られ解釈しだいで事実も変わります。歩きながら山を見るのに似て見る場所で違ったものに変わる。歴史は動きます」
「なるほど、そのようだな… しかし、また答えになっておらぬな」
「は、はい… 武力は時々使っておらねば維持は難しく、体も鍛えねば鈍ってしまうとのおおせの通り、特に兵器は実戦を重ねて進化いたしますなら、文治のみでは、いずれ後れを取り、あなどられるのではと懸念いたします。相手が弱ければ、容赦はありません」
令和元年五月十六日