ブログを体験してみる

はてなダイアリーの創設時期からブログを体験してみようと書きはじめてながい年月が経過した。

蝶々が散歩に付いてくる

昨日の金曜日、午前中はエッセイ教室だった。

夕方からの、居合の稽古は、大濠の武道館が使えず休みだった。

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サナギから出て来て飛び立つ前の蝶々

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先輩の蝶々が迎えに来た

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 朝食がまだだったようで、     いよいよ旅立ちます。

 

ベランダの黄色いチョウチョ               中村克博

 

 

 朝になると、ベランダにあるミモザの鉢植えに黄色い蝶が飛んでくる。ミモザのまわりをしばらく飛んで小さな茂みの中にひらひらと入っていく、ミモザの枝や細長い小さな葉をかわして黄色い羽根をパタパタしている。妻がしゃがみ込んで先ほどからその様子を見ている。ミモザの中でひらひら飛んでいる黄色い蝶々の前にはサナギから出たばかりの蝶々がぶら下がっているが、まだ羽がしわ皺で伸びきっていない。飛んできた先輩の蝶々は触覚が届きそうな近くで羽をパタパタしている。妻がそれを見ながら何か話しかけている。元気づけているのか、いたわっているのか、あやすように話しかけている。パタパタしていた蝶は疲れたのかミモザの藪を出て枝の先に付いた細い葉っぱにとまった。妻もミモザの鉢から離れて朝の支度をはじめる。ちかごろ我が家の朝は決まってこのような光景からはじまる。

蝶々は風が強い日でも少しぐらいの小雨なら木陰や家の軒下を伝ってやって来る。一匹のときも二匹で飛んで来るときもある。携帯で黄色い蝶の写真を撮って、インターネットで調べてみた。四種類の黄色い蝶の写真があった。どれもよく似ている。ツマグロキチョウというのは絶滅危惧種に指定されているらしい。キチョウと同じようなところで見られ、飛んでいる状態では判別が難しいらしい。写真をよく見ると我が家に飛んでくるのはキチョウのようだ。ベランダから妻の話声が聞こえてきた。僕も行ってみた。

先ほどと同じように、しゃがんでミモザの植木鉢を見ている。しわ皺だった蝶々の羽がすっかり伸びている。その羽に当たりそうなほど近くで先輩蝶々が羽をパタパタしている。ぶらさがっている蝶々の羽が少し動いたようだ。先輩の蝶々がまわりを動きまわって互いの羽が触れそうだ。しばらくして先輩の蝶々がミモザの藪から飛んで出た。軒先まで飛んでひらひらしている。妻はミモザの中を見て何やら話しかけている。軒先の蝶々がまたミモザの中に入っていった。そしてまた出て行った。ミモザの中の蝶々は羽を少し開いたり閉じたりしている。また軒先の蝶々がミモザの中にはいて、こんどは蝶々が二匹、連れ立って出てきた。一匹がすぐ後を追いかけるように軒先で二匹が入り乱れてひらひらしている。昇って来た朝日がまぶしい。

 

夏の盛りのころ、ミモザの鉢の下が黒いゴマを撒いたように汚れていた。なぜだろうとミモザをよく見ると緑色の小さなイモムシが沢山いた。大きさは鉛筆の芯くらいで長さは一㎝ほどだ。黑いゴマのようなのはイモムシの糞だった。ミモザの柔らかい新芽のところは食べられて細い枝だけになっているのもあった。大変だと思い殺虫剤をかけようか箸で摘まもうかとしたら、「その幼虫はかわいい蝶になるから」と妻が言う。以来、イモムシの糞掃除は僕の役目になった。

きのうの昼すぎ、妻の花教室の生徒さんが野外レッスンに来ていた。ミモザの鉢を見ている。妻が指さしてサナギが蝶になるのを説明しているようだ。二人の頭の上を黄色い蝶が二匹たわむれるように飛んでいた。僕もミモザの中を見るとサナギから小さな蝶の黄色い羽根が少し出ていた。生徒さんははしゃぐように感激していた。

膝を伸ばして立ちあがった妻が、

「このまえ、蜘蛛の巣に蝶の黄色い羽根がかかっていてねぇ」と言った。

「えっ、そうなんですか」と生徒さん

「羽だけで、体が無かった」と先生

すると生徒さんがミモザの横のモッコウバラを指さして、

「カマキリが蝶々を狙っています」と驚いたような声を出した。

「ど、どこ」

「こ、ここです」

 生徒さんに、カマキリを指さされ

「あなた、とってください」

 僕は緑の葉の中から蝶を狙うカマキリの首を鎌と一緒につまんだ。どうしようか、逃がしたらまたやって来るが、首をもぎろうかと思ったら、

「そんなことやめてください」

「なんで、またくるよ」

 言われるまま、僕は遠くまで持っていってツツジの葉の中に投げた。

 

 家にいるときは、日に何度もミモザの鉢を見ている妻によると、迎えに来た蝶々がサナギから出たばかりの蝶々のまわりを飛んでいると、やっと伸びきった羽を二度ほどパタパタするらしい。それを何度かやって、ついには迎えの蝶々が体をツンと触るらしい。するとサナギから出た蝶々は後を追いかけるように飛び立つそうだ。不思議なことだ。それに、あくる日に迎えに来るのは、今日、飛び立っていった蝶々らしい。どうもそうらしい。

 それから、まだ不思議な話をしてくれた。妻が家のまわりを歩くとき、池の近くや庭を通っていくときに、黄色い蝶々が一匹、あるときには二匹がひらひらと連れ立ってついてくるときがあるそうだ。いつまでもひらひら付いてくるそうだ。こればかりは本当なのか、見て確認しないとわからない。蝶々が人と連れ立って散歩するなど、まだ聞いたことがない。

 最近、八木山は朝夕寒くなった。日差しのいい昼間は体を使うことをすると汗ばむが、机にいると日中でもストーブに火を入れることがある。ミモザには、まだ十五個ほどのサナギがいる。夜は寒いだろうとミモザの鉢を部屋の中に入れる。朝、日が昇るころに同じ場所に出してやる。僕の役目なった。重いのでしかたない。

平成三十年十月十七日